「……わかりました」
「本当に、元気になって良かったわ」
「ご迷惑を……」
「いいの。貴方とは昔から知っているからこそ、心配だった。特定の誰かを心配することは、特別扱いになってしまうことはわかっているけど、貴方を弟のように思っているから……」
「お心遣いだけで、嬉しいです。僕も貴方を姉のように思っていたけど、公私混同はしません」
エイルが親衛隊の一員になっていなければ、血の繋がらない姉と弟として関係を保つことができたが、今は副隊長と新人隊員。エイルが言うように公私混同を行っていいわけがないので、彼はリデルの前で跪くと、これから先は姉と弟の立場で接することはしないと宣言する。
「立ち上がりなさい」
「で、ですが……」
「跪く相手は、私ではないわ。本当に跪くべき相手は、シェラ様。この国の女王陛下のみよ」
的を射た意見にエイルは気恥ずかしさを覚えたのだろう、頬を微かに赤く染める。跪くべき相手を間違えたことにエイルは反射的に立ち上がると、この件についてシードに黙っていて欲しいとお願いする。彼の頼みにリデルは頷き返すと、これについて黙認を了承してくれた。
「……有難うございます」
「さあ、行きなさい。貴方はこれ以上、立ち話をしている暇はないわ。自分に課せられた役割を果しなさい」
「……はい」
リデルに頭を垂れた後、エイルは踵を返し仲間がいる場所へ戻って行く。その後姿を暫く眺めていたリデルは嬉しそうに口許を緩めると、彼女も同じように踵を返す。向かう場所は、シードの私室。エイルと話していた「魔法の訓練」についての了承を得る為であった。
◇◆◇◆◇◆
「エ、エイル」
すっかり元気を取り戻したエイルの姿に、シンが素直に喜びを表す。一方、彼女の横にいるアルフレッドは「それ見ろ」というばかりの表情を作り、胸を張りながら腕を組んでいる。以前「本当に任せて大丈夫なのか」と見も蓋もないことを言われていたので、彼の優越感は続く。


