ロスト・クロニクル~後編~


 だからといってミシェル本人に直接尋ねるわけにはいかないので、ルークに間に入ってもらうのが適切だろう。これについてリデルがルークに話を付けると申し出るが、シードは頭を振る。ルークは彼女が考えている以上に裏の面が強い人物なので、一筋縄ではいかない。

 それに発言を誤れば、相手の思う壺になってしまう。リデルを信用していないわけではないが、ルークに話を付けるのは自分が行なうとシードが言葉を返す。流石にそのように隊長に言われたら返す言葉が見付からず、ただ頭を垂れ彼の言葉を静かに受け入れるしかない。

 しかしリデルも、誰が護衛に付くのか――それが気になるのだろう、シードにその点を問う。彼女同様にシードも人員に迷いがあるのだろう、彼は即答を避ける。それでも何か考えがあるのか、数秒後シードが口を開く。もし少数での護衛が望みなら、それ相応の実力者を揃えないといけない。

 武器に対して武器で望むのは妥当な方法だが、それ以上の力で望むとなると魔法の力を頼るのが一番いい。親衛隊の中で魔法の力を自在に使用できるのは、リデルの他にエイルしかいない。特に二人ともメルダースを優秀な成績で卒業しているので、腕前は確かである。

「僕で、宜しいのですか?」

「新人であっても、力があれば採用する。特に今回は、魔法の力が重要になるだろう……だからだ」

「わかりました」

 エイルは背筋を伸ばし、力強く返事を返す。それに続きリデルも返事を返すが、自分自身の魔法に自信がないのだろう、顔色がいい方ではない。メルダースを卒業して長い年月が経過し、魔法の練習もままならない状況でいる中、リデルの不安はわからないわけではない。

 副隊長の立場もあるのでリデルは必死にそれを隠そうとするが、シードとエイルは彼女の変化に気付いていた。だから彼女の心情を刺激してはいけないと、あえて彼等はそのことを口にしない。ただ、これからについてシードは淡々とした口調で語り、二人に命令を下す。

 シードの言葉に、エイルとリデルは同時に頭を垂れる。同時にこれが話の終了の合図となり、二人は退出した。そして後方で扉が音を鳴らし閉じられると、徐にリデルが口を開く。彼女が発したのは自分自身の魔法の力と、久し振りの使用なので自信がないというものだった。

 珍しく弱気な発言のリデルに、エイルは彼女が不安を抱いている理由を問う。魔法の力は使用者の力量が大きく関係しているが、それ以上に重要な要素は精神面。訛ってしまった力を復活させる為に練習できればいいとリデルは話すが、そのような場所はこの周辺にない。