嘘だと思いたい。
冗談だと言ってほしい。

そんな、事実。


『うん。好きだよ』

翔磨が口にした、その言葉が、頭の中で何回も何回もリピートされる。

信じたくないけど、驚いて冷やかすみんなと、照れたように笑う愛里、否定しない翔磨を見てると、嫌というほど思い知らされる。


愛里は翔磨が好き。
翔磨も愛里が好き。

つまり、両思いってことを。


「いつから好きなの?」
「どこが好きなの?」
「付き合ってるの?」

私が聞きたくても聞けないことを、翔磨を囲んだ女子が聞いてくれる。

でも、翔磨の答えは聞きたくないから聞かなかった。


しばらくすると、実行委員長に集合をかけられて、決められた席に座った。


「今日で役割分担が決まったので、次からは実際に活動していきます」

いつもなら真面目に聞く話も、全く頭に入ってこない。


前には、相変わらず密着している翔磨と愛里が座っていて、目にためている涙は、もう少しでこぼれ落ちそう。


「中本?話、メモしなくていい…って、どうしたんだよ?」

いつも、実行委員長の話をメモしているのに、今日はペンすら持っていない。

そんな私に気付いて、話しかけてきたのは、タイミングが良いのか悪いのか、やっぱり桜木。