朝、母親の「おーい、早く起きろ~」という声で起こされる。
まだまだ寝ていたいのに……とか思いながらも、どっこらせと体を起こして『いつもの日常』が始まる。
制服に急いで着替えて朝御飯を食べて母親の車に乗り込む。
空からは雪が降っていた。

「もうこれも終わりだね~」

「これ?」

「悠を駅まで送ること」

「あぁ、うん。そうだね」

「よく最後の1年は休まなかったね」

「友達と約束したからね」

「それでもすごいよ」

母親はそう言うと満足そうに笑った。
確かに今年で私の高校生活は幕を閉じる。
だから、最後なら皆勤賞とろうって友達と約束をした。
最初は絶対無理だって思ってた。
休みたくなるに決まってるって。
クラスの人と仲がいいってわけでもないし、頭がいいわけでも、運動がいいわけでもなかった。
私は勉強も運動もクラスの人たちも苦手で仕方なかった。
唯一の楽しみは一緒のクラスになれなかった友達との昼休み過ごす時間だった。
ただそれだけで休まなかったのは、きっと、学校っていうのが自分の中では最後だろうと感じていたのかもしれない。

私は就職をするでもなく、大学に行くでもない。
専門学生として新しい街で2年暮らす。
電車も寮から歩いて2分くらいで着く。それに朝飯と夜飯もつく。電車も10分感覚で来てくるから便利な街、つまり初の都会暮らしになる。
でもその専門は塾のような場所で午後1時には学校は終わる。
それに、予感がしていた。
同い年はいないだろうって。
きっと20歳以上だろうなと。