私と要の二人は小学校に入学してから、二度目の夏休みを迎えようとしていた。私たちは、今年の夏休みを去年よりもわくわくしながら待ち望んでいた。なぜなら、今年の夏休みにはいろいろなスケジュールが入っているからだ。いわゆるハードスケジュールである。その予定の内容は遊び尽くしである。七月中には夏休みの宿題を終わらせ、八月に遊ぶという予定である。はたして、今年の夏休みの宿題はどれくらい出るだろうか。それだけが私たちの心を不安にする。それに、一学期の通知表。悪かったらどうしよう、もし悪かったら予定がなくなっちゃうかな、とよく二人で話し合ったものである。しかしそのことは、一学期が始まる前に二人で、良い成績をとろうと打ち合わせてあった。だからそのことは少し安心していた。いよいよ私たちは楽しい夏休みを迎える。


「古葉君」

 江藤先生が要を呼ぶ。要は席を立ち、体を硬くしたまま教卓に向かって歩く。

 江藤先生は私たちのクラスの担任で一年生のころから引き継いでいる。女の先生で、外見は優しそうなのだが、怒れば恐く、悪いことは悪いと公平にジャッジを下す、親しみやすい先生である。クラス編成も無く、私たちは一年生と同じまま、学年が上がったのである。唯一変わったことといえば、教室が玄関から遠い位置に変わったぐらいしかない。

「古葉君、今回の成績は良かったよ。どうしたの?」

「今回は頑張ったから」

 要はいつもより、かなり照れているようだ。そして安心したように大きく息を吐く。

「ま、夏休みはほどほどに勉強して、いっぱい遊んで、また来学期に会いましょう。子供のうちにしか遊べないことはいっぱいあるからね。勉強より大切な…ま、いいや。ということで、夏休みは大いに遊んでください。じゃ、次、古葉さん」

 要はこちらを見て心配そうな顔を見せた。私は要とすれ違い、教卓に向かって歩く。その際、私の胸の鼓動が早くなった。これで、私の今年の夏休みが決まる。いつの間にか私は教卓の横にきていた。

 その時、私の頭の中に、今年の初詣の回想が映し出された。