秋が過ぎようとする中で、外はすでに白い息が出る。

 雄治がいる駐車場は、車が三台固まってポツリと止まっている。多分、この病院のものであろう。

 雄治は封筒と地図を持ち直すと、駐車場の出口へ向かって歩き出した。

 そこまで行くまで、辺りを見回しながら歩いていると、駐車場を囲むようにして木が立っているのに気がついた。その木々には紅葉がかろうじて残っていた。しかし風が吹くと、残った葉の色が太陽によって鮮やかに見えた。そして空を明るくした。

 雄治は車の免許を持っているが、車を持っていない。しかもバスや電車はお金がかかるからいつも乗らない。だから目的地までは常に歩きか自転車で行く。しかしバスから行くとしても、この病院から徒歩三十分くらいのところに停車場があり、駅まではなんと一時間半もかかるのだ。

 出口に近づくにつれて、だんだん雄治の目に光が入り込んできた。

 駐車場の出口に着くと、一度後ろを振り返った。そして芳江のいる病室の窓を見た。その窓を見ると、芳江がこっちを見て、微笑みながら手を振っているように見えた。

 昨日の雨でぬれた道は、太陽に照らされて、きらきらと輝いていた。まるで宝石が敷き詰められたじゅうたんのようだ。

 ふと天を仰ぐと、空には太陽が高いところまで昇っていた。その太陽は眩しく、雲を照らしていた。また、雲は太陽を避けるように風に揺られて動いた。

 それを見た雄治は、気分をよくした。この世には自分がいる、そう確信したのだ。当たり前のことなのだが、やっと今の自分が何をすべきなのかが分かったような気がした。重かった足取りも軽くなったような気がする。足取りが軽いまま、雄治は大きく一歩を踏み出した。

 病院の敷地内から一歩を踏み出すと、まるで別世界のようであった。

 雄治はポケットから地図を取り出して目的地を探そうとしたが、その手間は省けた。なんとその地図は目的地を中心とした地図で、しかも目的地には親切に赤いペンで囲ってあり、病院は青く囲ってあったからだ。

「何だ…孤児…院?こんなのあったっけ」

 それは目的地への場所であった。しかしその場所は今までに行ったこともないところであったので、少し不安だった。