「…え」

 深雪は戸惑った。俺も自分が何を言っているのかよく分からなかったが、言いたいことは合っていた。深雪と一生いたいのは事実だし、深雪がいてくれたからこそ、ここまでやってこれたと思っている。

 しばらくの沈黙が流れたが、深雪はその均衡を破った。

「何、つまり…結婚…ていうこと?」

「…分かんない」

 俺は頬が紅潮しているのが分かった。体中が熱くなり、深雪の方を見ることができなかった。

 そして深雪は暗い声で言った。

「でも…できないよ…結婚なんて」

「え、何で」

 俺の口から思いがけない言葉が出た。自分でもびっくりしている。俺は今、深雪と結婚したいと言っている。何を言っているのか、自分でもよく分からない。

 しかし深雪はそのことに気付いていないようであった。

「だから、できないの。前、テレビで見たことがあるけど、兄妹間の結婚はできないんだって」

「へー…そうなの」

 俺の体は一瞬にして冷めた。期待と希望が一瞬にして崩れたような感じだった。

 不思議な恋をして、不思議な付き合いをして、俺らはいつもどおりの生活をして、それを通じて互いを好きになったはず。でも、思わぬ壁に当たってしまった。法律という壁に、俺達の人生はどう左右されるのであろうか。俺はそれだけが気がかりでしょうがなかった。

「でも、俺達は家族でもなければ兄妹でもないぞ…どうなんだろう」

「私に聞かないでよ。とりあえず、役所に正式な届けを出さない限り、大丈夫なんだって」

「そうか…あとは父さんか…」

「何それ。何か私がアンタと結婚するみたいになってんじゃん」

「え…ダメなの?」

「…ダメってわけじゃないけど…アンタのこと、好きだし、他に好きになれそうな男は…」

「ならいいじゃん。俺と一生一緒にいよう。お願いだ」

 俺は部屋を出て、階段を降り、居間に向かった。深雪はついてこなかったが、その気持ちは俺でも分かった。

 そして居間に入り、父さんの前に座った。

「父さん。俺達って、正式な兄妹なの?」

 父さんは新聞をとじ、ぎょっとした目でこちらを見た。