その帰り、俺は父さんから、本当の父さんと母さんの死について教えてもらった。父さんは交通事故、母さんは肺がんによる死。それは衝撃であったが、俺はそれを聞けてうれしかった。それは、二人とも俺を思っていたことであった。死んでしまったことは悲しいが、俺を死ぬまで大事にしてくれていたことが、なんともうれしかった。

 そして深雪は、連れて行かれた実父と実母の話を聞いた。二人は昔、闇金からお金を借りて会社を興したが、すぐに倒産してしまったらしく、それでその際生じた借金がだんだん大きくなり、今は返しきれなくなって逃げていたが、今日、捕まってしまった。

 そして深雪は自分が捨てられたわけを、そこで初めて知った。深雪の目からは次々と涙が出てくる。しかしその涙は悲しみなんかではなかった。喜びであった。自分を思っての思い切りのある決断は、そうはできない。しかもその上、深雪を見つけてくれるまでは、川岸のススキに身を隠していて、それまではずっとそこで見守っていたということだ。

 深雪はまた会えることを信じて、仏壇の前で何かつぶやいていた。

 俺はその日の夜、なかなか寝付けなかった。つい父さんと母さんの顔を想像してしまう。父さんの話だと、父さんは一流の実業家だったらしい。しかしそんなことよりも、今まで実親がいたかいないかという心配が吹っ切れて、今は喜びに浸っている。

 しかし深雪のことを思うと、そんな気は無くなってしまった。

 風が去った後のように。