君の背中を見つめる恋

「仁科さん、何で……」


こんな所に?

そう言いかけて
阿部の目が捕らえた。


香乃の目が赤くなっていて
若干濡れた跡のある顔が

阿部の目に映る。


明らかに、

いや、絶対


─────泣いてた跡。


「……その目、どうしたの?」

「!?」

「なんかあった?」

「………っ」


香乃が顔を隠すように
パッと顔をそらした。


阿部が少しずつ香乃に近づくように
階段を上がる。