君の背中を見つめる恋

「だけど、……とられちゃった」

「……とられた?」

「正確には、その人には好きな人が居たんだよ。そいつに、とられた」

「………」

「俺の、一方的な片想いだった」


阿部の手に力が入る。

当時を思い出すと
胸が苦しくなって。

グッと手を握りしめた。


自分の想いを伝えられないまま
自分から遠ざかって行った


─────好きな人。


「だから、その辛さを誤魔化すために笑い始めたのがキッカケかもしれない。気づいたらもう染み着いちゃってて、取れないんだよね……この癖」

「………」


今じゃ何に対しても笑ってしまう。

そう言って、
阿部くんは顔を隠した。


阿部くんにも、
そんなことがあったんだ…

だから、


『仁科さんは、好きな奴居る?』


あんなこと聞いてきたのかな…