国王の馬車内では、深いため息と執事の苦笑いが生まれていた。
「また人魚狩りか、」
「ええ、また漁師が引きずられたそうですよ。それの腹いせとか……」
「……くだらないな。飛ばせハク。一雨降る前に熊くらい仕留めなければな」
「御意」
細長い指をカーテンから離すと外の景色は見えなくなった。
そして馬車は西の森へと進む
西の森には野生動物がたくさんいて、狩りを楽しむものたちの場所でもあり森の奥深くには魔女も住み着く不気味な場所
あまり人は入らず、狩人や、趣味で射撃をする貴族たちの少し危険な場所だ。
ハクと呼ばれた執事は、後ろの壁を二回ほど叩けば馬車は自然と速度を上げる
できた執事
そして、主人愛用の銃を綺麗に磨きあげていた
そして、向かいの席でうたた寝を始めた金髪で眼帯をした男性がブルージュ国、第一王子、ウィル
身長は高く、細長い指。
瞳はブルー。紳士的で余計なことは話さない、うっすら笑う口元は綺麗なラインで女性から人気ある。
が、
「ハク、うるさい。」
「申し訳ございません」
少し冷たい。
ハクは音を立てないよう最新の注意を払い銃をケースにしまう。
そして、銀時計を開けて今後のスケジュールを頭の中で計算していた。
そうしていくうちに、馬車は西の森にたどり着いた。
見渡す限り全て緑の大自然、
ウィルは気分良く銃を担ぎ馬車を降りた。
「御一緒いたします。」
ハクも当然のように降りようとするとウィルの腕が目の前をさえぎった。
「ウィル様。」
一応、ウィルは第一王子だ。
何かあってからは遅いためハクが万全の備えをしている。
だがハクが近くにいればの話だ。
ウィルだけとなると心配だ。執事としてだが……
「もうガキじゃないし。それに俺を心配するやつなんていない」
「従者«我ら»がいます。
それをお忘れなきよう……」
「ふっ…………そうだったな。」
うっすら笑うウィル、だが連れていく気はないらしい。
「ウィル様!」
ハクが止めに入ろうとした時だった。
後ろから遠慮がちに叩かれる肩
トントン……
小さな掌。
「なんですか、ユーリ」
ユーリと呼ばれた少年は、少し顔をあげてハクを見るがまた慌てて下を向いた
「別に怒ってません、ただ心配なのですよ。ウィル様が。
ユーリだってそう思……」
と、言いかけた時だった。
一瞬の隙を作り逃げた王子
ウィルは、ハクとユーリを置いて«無視して»森へと進んでいったのだった
そして、ハクはまたユーリが肩を叩き真後ろを指さしたため気づく。
主がいなくなっていることに。
「くそっ、世話が焼ける」
チッと舌打ちをして馬車のなかに戻る
どうせ追ったところで巻かれてしまう。この森では鼻が利かないためうかつにははいれないのだ。
ユーリはしゅん、と夕方のひまわりのようにうつむいていた。
「ユーリのせいじゃない、あの馬鹿だよ悪いのは……仕方ない。待機だ。」
「はい」
ユーリとハクは馬車で待機することになる。
