恋のはじまりはキス



「ちょっと聞いてよ~彼氏がね」


昼休み。

咲の彼氏の話を聞く変わらない毎日。


でも、今日は少し違った。


「百合、最近元気なかったけどちょっと元気になってない?
なにかあった?」

ニヤニヤしながら言う咲。


「ふふ。実はね…林くんとその…付き合うことになって。」


「えぇ!?林くんと付き合うの!?」


あの日と同じ反応。


「もー恥ずかしいって!」


「ご、ごめん。いきなりだったし、しかも林くんだし。ほら、百合より年下で、それに彼女いるって聞いてたから。」


まわりを心配してキョロキョロする咲。


今日もまわりにはあまり人がいない。


「彼女いないんだって。」


「そうなの?やっぱり噂は噂だねー。
で、なんで付き合うことになったの?前から好きだった?」


私は首を横に振る。


「恋って不思議だよね。今まで何とも思ってなくて、ただの同期だったのに。」


「うん。」


「なんでかっていうと、まぁ…一言で言うなら…はじまりはキスかな。」


本当に不思議。

キスはきっかけにすぎなくて。

でも、私は一瞬で恋をした。


「キス?えーなにそれ。詳しく聞かせてよ!」


「だーめ。百合さんと俺の秘密。」


後ろからひょこっといきなり現れ、林くんは言った。


「残念。百合を幸せにしないと許さないよ?」


「もちろん。俺は百合さんよりも前からずっと好きだったし、気持ちの大きさも負けないから」


真面目なトーンだった。


前からずっと…?

それって…


「「いつから?」」


私と咲の声がかぶる。


「内緒!」


林くんが子供っぽく笑う。