オフィス内のあまり人が来ない穴場のベンチに座り込む私。
外を見ると、朝は日が差していたのに夕方の今は黒っぽい雲で覆われている。
もうすぐ雨降るなぁ。
そう心のなかで思うと同時にポツポツと降りだした雨。
なんというタイミングなんだろう。
私のこのよくわからない気持ちもこの雨が流してくれたらいいのに。
ふわっ
私の身体は後ろから温かいものに包まれた。
「ごめん…。」
林くん…!?
ドキッこの前のように段々とはやくなる鼓動。
溢れ流れようとしていた涙が引いていく。
「…離して」
そうじゃないと、ドキドキしすぎて私が私でなくなる…
「嫌。離さない。また百合さん逃げるから。」
雨音に消されてしまいそうなくらいに弱々しい声。
「ちゃんと謝らせてよ…」
「うん…」
この腕から逃げるなんてできなかった。
「この間はごめん。 俺、必死だった。百合さんの気を惹き付けたくて。」
ぎゅっと強くなる林くんの腕。
「肝心な百合さんの気持ち考えてなかった。許されることじゃないけど、本当にごめん。」
引いた涙がまた溢れだす。
躊躇なく涙は流れた。
「俺、彼女複数いないんだよね。複数どころか…百合さんと一緒。」
私と一緒?
「彼女いたことないよ。百合さんの気をひくための嘘。」
そう言う林くんの手が少し震えているような気がした。
「好きです」
「…うん…っ」
「百合さんは?」
「…うん、私も。私も…好き」
私たちはキスをした。
この間とは違う、想いの通じあった優しいキス。
私は『幸せ』を初めて知った。


