恋のはじまりはキス



翌日から、私は何事もなかったかのように振る舞った。

本当は訳もわからず泣いたし、何事もなかったわけじゃない。

でも、咲や他の友達に相談したりはなんとなくできなかった。


流されてるだけ。

恋に恋してるだけ。


そんな答えが返ってくるような気がしたんだ。


初めてドキドキした。

自分の気持ちがどうなのかよくわからないけれど、ドキドキした気持ちをなんとなく忘れたくなかった。



「百合さん…っ」


「おはよう林くん。今日も外回りがんばってね!」


林くんが私を呼ぶ。

私が笑顔で話す。

そして、その先の会話をすることなく立ち去る。


毎日同じような会話の繰り返し。

あの日からもう1週間続いている。


避けてるってわかってるよね?


今まで毎日会うことなんてなかったから

きっと私に話したいことがあるんだ。


でも、私は林くんの本音を聞きたくない。

からかってるだけなんでしょう?

初めてドキドキしたなんて言ったら笑うんでしょう?


切なくて、悲しくて、自然と溢れてくる涙をとめることがどれほど大変か。

1週間…か。

そろそろもう1回くらい流してもいいかな?


自分の中の何かが外れる音がした。