「…ン、…ダージリン。」
これは、サツキの声だ…。
俺が目を覚ますと、サツキはまた、優しい顔で俺の耳を触った。
「あなたの名前は、ダージリンがいいみたいね…。」
ダージリン?響きはいいな…。
『うん。』
俺の返事が通じたのか、サツキはにっこり微笑んだ。

そして、俺の首の後ろをひょいとつかんで、どこかに運んでいく。俺は、戸惑いながらも、体の力を抜いた。

そっと降ろされた俺の前には、魚と缶の匂いがするものがあった。
「今日からこれがあなたの朝ごはんだからね。」
そうか、エサのことか…。
俺は、恐る恐るこの缶に口をつけた。
『…うまい!!これうまいよ!!』
俺が叫ぶと、サツキはまた優しそうに頭を撫でた。
1年前とは違う…柔らかい手だった。

エサを食べ終わった時、サツキはまた俺の首の後ろをつかんで何かの中に入れた。
何だ?足元には、最初に寝かされていた、布がある…。
グラッ
『あぶね!!』
…どうやら、これはカゴバッグのようだ…。体が浮いている感覚が、気持ち悪い…。
俺は、目を閉じていることにした。その方が、気持ち悪い感覚が薄れることを知ってるから。