【優しい時間】

あれから、変わらずチョコチョコ結依の元には、通っていた。しかし前と比べて変わったのは、公園の幽霊が結依以外に増えていることだ。
俺の霊力の影響で、幽霊を引き寄せてるのか。しかも集まった霊達は、驚くべきことに、みんな結依の虜になってるみたいだ。
今日も、公園でワイワイやっている。
「おっ。現代の安倍晴明が来なさったぞ」
小太りのおっさん幽霊がちゃかしてくる。
「うるせぇ。ん?なんかお前見たことあんな」
目を凝らして良く見てみると、なんだか見覚えのある小太り感だ。
「あっ、お前この間、デートの時のクソ幽霊か!」
「そうだよ~。いやぁ、アンちゃん、あの時はおもいっきりフラれてたなぁ」
おっさん幽霊はニヤニヤと笑っている。なんとも嬉しそうだ。
「おっさん。良かったな。今日があんたの成仏記念日だ」
ゴソゴソと上着の内ポケットから、大量のお札を取り出す。
「おっさん。観念しな」
ニヤニヤしながら、おっさんに1歩ずつ近付く。
「まっ!待った!アンちゃん。落ち着け!な!?話せば分かる!」
変わらず、ニヤニヤしながら更におっさん幽霊に近付く。
「ちょっと~。伊織ちゃん。おじちゃん虐めちゃダメよ~」
「分かったよ。ちくしょう。おっさん、次はないぜ?」
札をちらつかせ、おっさんを牽制する。びびるおっさんを見てると気分が良い。
「分かったよ。アンちゃんは洒落が通じないな~」
「伊織ちゃん。お札良いように使ってない?」
結依が言った。
「幽霊ビビらすには、これが一番なんだ」
いたずらに笑ってみせる。
「私も、最初脅された。なんか悔しいから、今夜夢に化けて出ようかしら。幽霊なだけに」
自分の発言に、思わずブフッっと笑い出す。
「お前なぁ。洒落になってねぇよ。幽霊が言うと、ガチじゃねぇか」
思わず、俺も笑い出す。気づけば、結依や俺だけでなく、みんなが笑っていた。
みんなが自然と笑みがこぼれる。結依は、この公園の座敷わらしなのか?
そんな思いが頭によぎったら、更に笑えてきた。
初めて、霊能力があって良かった。そう思えた夜だった。