【彼女は人気者】

あの夜から、俺は前にも増して公園に通うようになった。
最初は、珍しい幽霊もいるもんだと思って、興味本意で通っていたが、段々と彼女の人柄に惹かれていくのが分かった。しかも、ガッキーと名前が同じ……。こいつは、本当に偶然だ。
絶世の美女の幽霊に魅せられた男が、女に会いに、健気に通った挙げ句、幽霊に精気を吸い取られる。良くある怪談話だが、少し気持ちが分かる気がする。
まあ、俺の場合、霊能力者だから、幽霊だって分かってるし、精気を吸い取られてはいないけど。
ただ、男は本当に美人には弱いもんなんだな。昔から本当に変わらない。人間でも幽霊でも。
さて、今日も公園に行くか。
「よう。今日は涼しかったなぁ。」
「おっ!伊織ちゃん。お疲れ様。今日、涼しかったんだぁ。幽霊になると気温とか感じないから、教えてくれてお姉さん嬉しいよ。」
「さりげなく、悲しくなるこというな。」
「おっ。泣いちゃう?伊織ちゃん。泣いちゃう?」
「うるさい。泣かないわ。仮にも霊能力者だぞ。」
「怖~い。霊能力者怖~い。悪霊退散とか言っちゃう感じ?」
「札、張り付けんぞ。」
お互い、笑いながらじゃれ合う、幽霊と霊能力者。端から見たら、おかしな光景だ。
でも、もう幽霊とか、そうじゃないかなんて関係ないのかもしれない。
結依は、人の心に入ってくる天才だ。幼い頃、幽霊が見えるっていうことを周りにうっかり、喋ってしまってから、気味悪がられてきて、あまり友達がいなかった俺には、なんの偏見もなく接してくれる結依が素直に嬉しかった。
「また、来てくれる?」
結依が、目をじっと見つめて聞いてくる。
「あぁ。また来るよ。」
微笑みながら、俺は答える。
しかし、それとは裏腹に心の奥底にある(彼女を成仏さてあげなくては)という思いが俺の胸を締め付け始めていた。