【幽霊との交流】

家に帰った俺は、しこたま酒を飲んだ。ビール、焼酎、日本酒、ウイスキー。チャンポンにチャンポンを重ねた結果、まぁ、案の定吐いた。
マジで気持ち悪い。さすがに飲みすぎた。最後にウイスキーに日本酒を割ったのが悪かったのかな。
フラフラになりながら、なんとかトイレから出た俺は、外の空気にあたりたくて、家を出た。
俺には、最近お気に入りの公園がある。町の外れにある、その公園はブランコがあって、滑り台があって、ジャングルジムがある。
まぁ、少し小さいがそれ以外は至って普通の公園だ。
ここの、ブランコに揺られながらタバコをくわえて、ボーッとするのが、俺の癒しだ。
夏の終わりの、心地よい夜風に当たりながら、なんとか公園に着いた俺は、ブランコの方に目を向ける。
すると、ブランコは上下に揺れていた。
あれ?珍しいな。先客か?もう深夜の2時なのに。
不思議に思いながらも、ブランコに徐々に近づいていくと、直ぐに正体が分かった。
マジかよ。また幽霊かよ。クソ幽霊め。俺の癒しまでも妨害する気か!?
更にブランコに近づき、姿を確認すると、長くて綺麗な黒髪に、白い肌、それに随分と可愛い顔立ちをしている。(芸能人で言うなら、ガッキーに似ている。)
しかし、どんなに可愛いくても幽霊は幽霊だ。俺には不幸しか運んでこない。それに、俺のお気に入りの場所に居付かれるのは困る。ここは、きつく言って、退散させねば。
「おい。あんた、ここは俺のお気に入りなんだよ。悪いけど、どっか他の場所行ってくれ!」
クソ幽霊はキョトンとした顔で俺を見上げている。クソ!ちょっと可愛い。
「えっ!あなた、私が見えるんですか!?」想像通りの答えが返ってきた。幽霊からしたら、やはり自分が見える人間は珍しいようだ。まぁ、普段は見えても見えてないフリするけど。
「あぁ。まぁ、生まれつきでな。どうでも良いけど、どっか行ってくれ。俺はもう幽霊なんかと関わりたくないんだよ。」
「……ブランコ乗りたいんですか?隣にもう1個ありますよ?」
「いや、確かにブランコは隣空いてるけど、一人になりたいんだよ。」
「嫌です。私、退きません。ここ気にいってるんだもん。」
「何?俺だって、ここ気にいってるわ。最近通い始めたし、もはや愛してるの域だね。」
何、幽霊に熱くなってるんだろうか俺は。
あっ、昼間は幽霊達にぶちギレたっけ。
「あっそう。私もここ愛してます~。今、愛し始めました~。残念でした~。」
ケラケラと意地悪に笑いながら、俺を見上げるクソ幽霊。腹立がつ。でも、まぁ良いか。害もなさそうだから、このままでも。
俺はタバコを取り出し、火をつけ、彼女に再び話しかけた。
「はいはい。そうですか。まぁ、良いわ。あんた、害なさそうだから。で、あんたいつ死んだの?」
「う~ん。あんまり覚えてないんだけど、最近ではない思う。ここで人を待ってたんどけど、気づいたら死んじゃったみたい。」
こいつ、随分あっけらかんと、自分の死について話すな。変わってるなと思いながらも、自然と惹かれていたのか、更に会話を交わしていった。
「マジか。じゃあ、もしかしたらあんた、この公園から動けないんじゃ?」
「うん。なんかダメみたい。公園から出ようとしても、壁みたいになってて出れないの。」
「そうか……。」
どうやら彼女は地縛霊になってしまってるらしい。恐らくこの場所に、何かしらの未練があるんだろう。それが叶うことがなければ、成仏はできず、何年も、何十年もこの場所に縛りつけられる事になる。しかし、1つ気がかりなことがある。なんで今まで俺には、こいつが見えなかったんだろう。仮にも霊能力者の俺に。力が弱まっているのか?
「なぁ、あんた。俺ちょくちょく、ここに来てたんだけど、ずっとここに居たか?」
「うん。まぁねぇ。何回かあなたのこと見たことあるけど、いつも酔っ払てたし、見えてないんだと思ってた。」
さっきとは違い、優しく笑った彼女は、少し嬉しそうだった。
「ねぇ。あなた、またここに来るの?」
「うん。まぁ、気にいってるしな。幽霊いるけど、しょうがねぇか。」
「もう。失礼な人ね。でも、ブランコ1個余ってるから、いつでもおいでよ。あっ、お酒は控えめに。タバコもね。」
「酒とタバコがなくちゃあ、やってられないんだわ。でもまぁ、多少は控えるか。あっ、俺伊織ね。あんた名前は?」
「私は、結依。宜しくね。伊織ちゃん。」
そう言うと、彼女はまた、優しく笑った。