「もう!」
「悪い…」
慌てて拾いながら私は頬を膨らませる。
コウさんがもう一つの缶を拾おうとしたけど、私はそれより前に手を伸ばし、さっさと袋の中にしまい込んだ。
「コウさんのバカ。もう知らない」
なんだかすっごくイライラする。
思いっきり不機嫌になりながら乱暴に立ち上がろうとすると、ふと視界の片隅にもう一つ手の平サイズの箱が見えた。
あれ?なんだろう。もしかしてあれも一緒に落ちちゃった?
首を傾けながら、恐る恐る手に取ってみるとそれは何故か市販の風邪薬。
「え、何で?」
これも遠藤さんがくれた物だとしたら、ちょっと意味が分からない。
だって私風邪なんか引いてないし、もしかして間違えて入れちゃったとか?
「どうした?」
「あ、うん。これ」
コウさんが私の側に来て、持っているそれを覗き込む。
「……風邪薬?」
「なんか間違えて入ってたみたいなの。返してきた方がいいよね?」
もし本当に間違えだったら大変だ。違う階の人に頼まれたやつかもしれないし。
そう思い、もう一度エレベーターのボタンを押そうとしたら、「ちょっと待て」と、突然隣からガシッと腕を掴まれた。



