そうだよ。勘違いするにもほどがある。
「そもそもコウさんの方こそもっと態度を改めたら?遠藤さんは気にしてないみたいだったけど、めちゃくちゃ感じ悪かったよ」
ムムッと、勢いにまかせて言い終えた瞬間、チンっとエレベーターのドアが開いてコウさんがさっさと中に入り込む。
私も続けて入ったけど、あえてコウさんと距離をあけた位置で立ち止まった。
「感じの悪い大人は嫌い」
「ふっ」
ふんっと言い放つと、何故か隣から気の抜けた声が飛んできて、面白そうな笑いを向けられた。
そして悪戯に表情を緩めながら
「ムキになりすぎ」
さも可笑しそうに私との距離をつめてくるから、私はますますムカツいて彼に向って睨みつけた。
「嫌味で無神経なおじさんはもっと嫌い」
「くくっ」
「ちょっと、なんで近づいてくるのよ」
「さぁ?」
「やだ、こっちにこないでよ。ちょっとコウさ……」
ドンっ!と後頭部の上で音がして、一瞬えっと驚いた私は気づけば背中は冷んやりとした壁に追いやられていた。
目の前にはクールで整いすぎたコウさんの顔が視界いっぱにあって、思わず目を見張る。
「俺はズバズバ言う気の強い女は結構好きだけど?」
「えっ……」
「大したもんだよ、あんたは」
「……」
至近距離で見下ろされ、ドキリトと言葉を詰まらせる。
え、なに?
一瞬言葉が途切れると、真面目な顔が一転今度は「ブハッ」と目の前の顔が大きくブレ始めた。



