愛情の鎖


「澤田様も今日はもうお部屋にもどられますか?」

「あ、そうですね。すみません」

「いえいえ、私の方こそ無理にお引き止めしてしまって申し訳ございませんでした。ティータイムはまたの機会にしましょう。もし気が向いたらいつでもカフェの方まで顔を出してくださいね。ここのコーヒーは特別美味しいと他の住人の方にも人気なんですよ」

「はい」


ニッコリ笑うと、遠藤さんも優しく目を細めてくれた。

本当に物腰が柔らかい人。こうやって話してると、ついつい気を許してしまいそうになってしまう。

イケメンだし、いい人だし、そんな彼が宗一郎さんと繋がってるなんて本当不思議なぐらい。

人って見かけによらないよね?

そう思いながら遠藤さんから背を向けようとすると、いつの間に用意したのか、突然茶色い紙袋を手渡された。


「よろしかったら飲んでみてください。さきほど言っていたハーブティーです。少しは気分転換できると思いますので」

「いいんですか?」

「もちろんです。おすそ分け程度で申し訳ないですが、ぜひ飲んでみてください。気分をスッキリしてくれる成分も入ってますのでオススメですよ」

「ありがとうございます」


嬉しくて、素直に顔がほころんでいく。

今までモヤモヤしていた気持ちがちょっぴり晴れてくようだ。

私は遠藤さんに満面の笑みを向けると最後にもう一度お辞儀をして、コウさんが向かったエレベーターに早足で駆け出した。