愛情の鎖


花火も終盤に差し掛かると、コウさんが怪訝そうな顔をしてこう言った。


「なんだ。やけに楽しそうだな。しかも独り言まで呟いて」

「はは……うん。なんかスッキリしちゃって。私ね、旦那のこと全然愛してないんだよね」


突然のカミングアウトに一瞬動きを止めたコウさん。


「コウさんも昨日見たでしょ?あの人が旅館の女将さんとイチャついてたの。でもね、あの時私は何も感じなかった。むしろ少し気持ちが楽になったんだよね」


もしかしたら自由になれる?

宗一郎さんが私を手放す日が来るかもしれない。

あの人から解放される時が来るんじゃないかって。

そんな淡い期待が膨らんだのだ。


「ごめん、ビックリした?私冷めてるでしょう?」

「……」


そんな問いかけにコウさんは何故か何も言わなかった。

口を閉ざし、ただ私を真っ直ぐ見つめてきただけだった。

そんなコウさんに不覚にも思わずドキッとしてしまった。

だって目の前には目、鼻、口、全てのパーツがバランスよく整った 綺麗なお顔。

鼻筋は高く。キリッとした奥二重の意思のつよそうな瞳。それはまるでモデル雑誌の切り抜きをそのまま持ってきた感じなのだ。