愛情の鎖


そのあとの女将さんの表情は今思い返してもはっきり分かるほど驚きに満ちたものだった。

まさか、私がそんな風に反論するなんて思ってもみなかったのかもしれない。

けれど、私だって言われたままじゃ面白くない。私は宗一郎さんに買われた人間だけど、何も言えない人形じゃない。

イラついた時は暴言だって吐くもん。

それが私。

澤田梨央という人間だ。


色鮮やかに弾ける火花を見つめながら次第に感情も弾けてく。

コウさんの付けてくれた花火を楽しむうち、そんな苛立った感情が綺麗サッパリ無くなっていた。

そしてやっぱり気付いたことが一つ。


「やっぱり愛してなんかない」


うん。私は宗一郎さんをこれっぽっちも愛してなんかいない。

それを再確認した瞬間、妙におかしくなってクスリと笑みまでこぼしてしまった。