愛情の鎖


そんな女将さんが私に対してグサリと敵意を向けてくる。

きっとそれだけ宗一郎さんのことが好きなんだろう。だって、庭園のやりとりの時でも女将さんが一方的に宗一郎さんに迫ってたもんね。

女将さんにとったら、私は煩わしい存在でしかないのかもしれない。

……けれど、だからと言ってこんな風にいちゃもんつけられたらさすがの私もいい気はしない。


「言っとくけど、宗さんの奥さんだからっていい気にならない方が身の為よ。彼にどんな手を使ったのか分からないけど、彼にはね。私以外にも愛人なんて沢山いるんだから」


そう、ですか。

そりゃね。宗一郎さんはモテる。お金も地位も名誉も、そして容姿さえも全てかね揃っている完璧な男。

だけど正直私には迷惑だ。苦痛でしかありえない。

せっかくの誕生日なのに、いちいちそんなくだらないことで気分を害さないで欲しい。




「だったら差し上げますよ?」



だから言ってやった。


「そんなに彼のことが好きならあなたにお譲りします。どうぞお好きになさってください。むしろその方が私も助かります」


そうすれば私は救われます、と。私は酷く冷めた口調で彼女にそう言った。