愛情の鎖


「そんなんじゃ、一生結婚なんてできませんよ」

「余計なお世話だ」


私はプイッと顔を背けて、汚れた膝をパンパンと払う。その隣でコウさんも立ち上がると、何食わぬ顔して花火の袋を開け始めた。


「ほら」

「ありがとう」


わーい、花火だぁ。

ギスギスした空気も一変。持っていたジッポで火を付けてくれたコウさんに目を輝かせた私。

目の前でパチパチと跳ねる火花。

手持ち花火なんて久しぶりだろう…

そういえば、宗一郎さんとは今まで一度も花火を見に行ったことさえないんだよね。


「楽しい、綺麗!」

「そりゃよかったな」

「花火なんて久しぶりだもん」


コウさんが次の花火を付けながら口の端を上げる。

なんだか気持ちが晴れていく。

素直に嬉しい。正直、本当のことを言うと昨日からどんよりと気分が沈んでいた。

原因はもちろん宗一郎さん。

別に喧嘩とかはしてない。……ただ、あの後旅館の部屋に戻ってきた宗一郎さんは私が寝た後、再びこっそりと部屋から出て行った。きっと、あの時女将さんと話してた例の誰かに会いに行ったのだろう。

そして帰ってきたのは朝方。

しかも彼は帰ってくるやいなや、急な仕事が入ったとか言って、私を残し一人で先に帰ってしまった。

そして迎えに来てくれた翔太の運転で帰ってきたんだけど…

……帰り際、女将さんに言われた言葉に私はかなりの憤りを感じたのだ。