愛情の鎖


だって…、そこに居たのは宗一郎さん一人ではなかったから。

そこには何故かこの旅館の女将さん?らしき人が居たのだ。

よく見ると二人はなにやら親密そうな雰囲気をだしていて、直感的に「マズイかも…」と思った私は目の前の大きな岩に瞬時に身を隠した。

なにやらヒソヒソと話し声がする。とてもじゃないけど近づける空気じゃない。

それはあからさまに女将と客という間柄を通り越しているように見えて、急にドクドクと鼓動が上がり始めた私はすぐ後ろまで迫ってきた気配にまったく気付くことができなかった。


「おい」

「ひゃっ……」


突然肩を叩かれて、まるで電気が駆け抜けたようにビクついた。

咄嗟に口に手を当て、慌てて振り向いた瞬間…


「こんな所で会うなんて奇遇だな」

「えっ……」




そこにはコウさんがいた。