愛情の鎖


……だけど、一向に繋がらない。

コール音は聞こえるのに出る気配がないないのだ。


「どうしたんだろう……」


何となく落ち着かなくなって、私はいそいそと目の前に散らばった衣服を身につける。
入り口のふすまを開け、キョロキョロ見渡しながらとりあえずフロントに行こうと部屋の外へと歩き出した。

渡り廊下から綺麗に手入れされた中庭が見える。

宗一郎さんからの電話はやっぱりなく、その景色に魅了された私は気が変わり、なんとなくフロントには向かわずそこへと足をむけた。


中庭に出るとそこには大きな池に沢山泳ぎ回る鯉がいた。

そこで立ち止まり、ゆっくりとしゃがみ込むと何気無くその光景に目を向ける。


「鯉なんて見るのいつぶりだろう……」


宗一郎さんと結婚して3年。

間違いなくその年月はこんなふうに一人でマンションの外へと出た記憶はない。

例えそれが旅行先の中庭だっとしても、見慣れない景色の中に居ることだけで、私にはとても新鮮なことに思えるのだ。