そんな私を若干不思議そうに見てたコウさんだったけれど、私はすぐに気を取り直し弦さんとのお喋りに花を咲かせ、その話題を強引に打ち切った。
※※※
「それじゃあご馳走さまでした」
「ああ、またよかったらいつでもおいで」
それから1時間ぐらい他愛ない話をして私達は弦さんのお店を後にした。
結局私はあれから追加で一杯飲んでしまい、
外に出ると夕暮れだった空は肌寒く、周りは真っ暗な彩りに変わっていた。
肌寒い冬空の下、私はふと立ち止まり車に向かって前を歩くコウさんの背中を見つめる。
それは凛としたたくましい後ろ姿。そんな彼の存在を身近に感じながら私はやっぱり顔が緩んでしょうがない。
だってコウさんとこんな風に会えるなんて…
ずっと夢みてた。
この日がくることを。
屋上じゃない。ましてや夜中限定じゃない。
普通の日にこうして堂々と何のしがらみもなく会えることが何よりも嬉しいんだ。
私はもう誰かの所有物じゃない。
ましてや人形なんかじゃない。
中園梨央として、平凡な女の子として堂々と生きれるんだってことが嬉しくてーー、
気付けば駆け足で近付きコウさんに向かって腕を伸ばしていた。
奥底からドクドクと沸き上がる思いが止まらない。
「…コウさ……」
そのまま後ろから抱きつくと、私は車のロックを解除しようとした彼の動きを止め、変なことを口走る。



