愛情の鎖


「他に行くとこが思い付かなくてさ、よかったらこいつに何か一杯作ってやって?」

「へー…あいよ。開店までまだ1時間あるけど真白に言われちゃ断れねーな。よし特別に作ってやるか」


マスターは気前よく笑う。

そして再び私の方に視線を向けると興味深そうに口の端を上げてくる。


「嬢ちゃんの好きなお酒は?好みに合わせて作らせていただきますよ」

「……え?あー…とっ」


困ったな。

そう言われてもすぐに返事が出来なかった。

それでも普段ビールしか飲まないし、好みのお酒と言われてもよく分からないとぎこちなく告げれば、弦さんは嫌な顔せず、OKと言ってくれた。

「ビール好きかぁ、ーーよし、じゃあ今まで飲んだことのないとっておきのものを用意してあげるよ」とそのあと私の前に出されたのはビールとは言いがたいグラスに注がれたピンク色の液体。

カウンターに座った私は今しがた出されたそれに「わぁ」と歓喜の声を上げ、コウさんを見る。


「弦さんが出してくれたもんなら間違いねーよ」


そう言ったコウさんの顔はいつにも増して安心しきったように見える。

その様子からしてとても親密な感じ。普段鈍感な私でも分かる。
弦さんとコウさんの間には並々ならぬ信頼関係があるのかもしれないって。