愛情の鎖


「……梨央?」


食事も終え皆が寝静まった夜、なかなか寝付けずにリビングに降りてきた私を母の声が呼び止めた。

母はトイレに行っていたようで、私を見つけ呼び止めたあと「少し話さない?」と言って私をソファーに座らせた。

少しして母がホッとココアを2人分いれ、持ってきてくれる。

私は少しの間隔を開け、隣に座る母の存在を意識しながら温かいそれをゆっくり口に含む。


「本当夢みたい。こうしてまた梨央とこんな気持ちで一緒にココアを飲める日がくるなんて」


そう言った母はとても嬉しそうに私を見つめた。

私はというとそんな母の言葉を受け入れながら「……うん」と軽くうなずくことしかできなくて。

思い返せば小さい頃から母はこうしてよくホッとココアを作ってくれていた。

それは私が風邪を引いた時、友達と喧嘩した時、受験で行き詰まった時、様々な場面でココアを通して私の気持ちを楽にしてくれたんだ。


「前にこうして梨央と話した時はお互い泣きっぱなしでこんな風にココアなんて飲める雰囲気じゃなかったものね」


母が切なそうに目を伏せる。

私もまた何も言葉にできなかった。ただ目をスッと目を細め、その時の事を脳裏に思い返す。