愛情の鎖


私だって幸せになりたい。

だからこうして切実に悩んでるんだもん。


「だったらお前も両方手に入れることだな。愛も金もバランスよく手に入れて初めて人は幸せだって感じるんじゃね?」

「えっ?」

「梨央、今まであの男に何言われてきたか知んねーけど、金で欲は満たせても心までは満たされない。逆に愛情だけあっても生きられない。つまり、極端だが人間なんて両方揃ってないと満足できねー動物なんだよ」


なるほど…
確かにそうかもしれない。悔しいけどコウさんの言うことは一理ある。妙に説得力があるよ。

だってコウさんの言ってることは欲張りにみえて、本当は誰しもが望む理想の現実なのかもしれない。
私だって実際心の片隅ではそうなれたらどんなにいいかって…


「……でも、それができたら苦労しない」

「だろうな、だから俺みたいな商売が今の世の中には必要不可欠なんじゃねーの?」

「……」

「今の世の中愛にも金にも飢えてる奴等が多すぎる。バランスよく満足してる奴なんてほんの片手一握りなんじゃね?おかけで俺らは毎日こき使われてヘトヘトだけどな」


それはつまり、この世に完璧な人間なんていないっていうこと。
何かしら不満や寂しさをかかえ、時には人を傷つけてしまうっていう悲しい現実だ。