愛情の鎖


「そう言えばこの前真一君に会ったわよ」

「えっ……」

「買い物してる時に偶然会ってね。お母さん少し真一君と少し話をしたんだけど……」


飲もうとしていた紅茶を口から離すと、母が少し言いにくそうに顔を歪めた。


「このこと梨央に言おうか迷ったんだけどね。でも、もうあれから3年経つしもういいわよね?今日梨央に会ったらそれとなく伝えようと思ってたの」


ドキリと顔を上げた。

久しぶりに聞く「慎一」という名前に心がざわつくはずがない。

だって岡田慎一。彼は私の4つ上の幼馴染み。そして私の初恋の相手だからだ。

宗一郎さんと出会うまでずっと好きだった慎ちゃん。彼は昔から私に優しくて、そして頼り甲斐があり私のよき理解者だった。

私が宗一郎さんにお金で買われた時も最後まで私を守ろうとしてくれて、そして私を好きだと言ってくれたのを今でも鮮明に覚えている。

あの時、別れ際初めて彼に抱きしめられたのを思い出すと切なくてたまらない。


「守れなくてごめん……」


そう言って涙した彼をきっと一生忘れることはない。