「何だか晃一の意外な一面を見た瞬間だったわ」
「はぁ…」
「あいつも誰かの為にあんなに必死になれることがあるんだなって」
唯さんのその言葉はどこか意味深だった。
それじゃあまるで、今までコウさんは誰かの為に必死になったことがないんだっていってるみたいで…、
「まぁ、唯一言えるのは晃一が一人の女の子に対して真剣になることもあるんだって分かって少しホッとしたってところかな」
「……」
私はそれについて何て言ったらいいのか分からなかった。だから少し苦笑いを浮かべてその場を受け流すしかできなかったんだけど…
「とりあえず今の梨央ちゃんは晃一から離れちゃダメよ。しっかりとあいつに守られてなさい。もし晃一に言えないことがあるなら私がいつでも相談にのるからね」
「…はい、ありがとうございます」
そして唯さんはやんわり帰って行った。
コウさんがマンションに帰って来るのを見届けると「また来るね」と言って優しい笑顔を残してくれた。
まるで年上の友達ができたみたい…
そんな柔らかな唯さんの温かさに触れて、私の気持ちもまた一段と癒された気分になっていく。



