愛情の鎖


「相変わらず容赦ないっすね」

「分かってるなら毎回同じことしないでよ」

「すんません…。でもさすがなんちゃってナース、手際が完璧っすね」

「そんな風におだてられても嬉しくないし。それよりもっと自分のことを大切にしなさいよ」


本当手加減ってやつを知らない。

自分のプライドの為なら命すら平気で落とすことを躊躇わない。

宗一郎さんも気付くと拳や腕、肩などに時々痣をつくって帰ってくる時がある。

翔太程頻繁ではないけれど、その度に私はこんな風に毎回手当をしていたりする。


「頭は幸せっすね」

「何が?」

「毎日こんなふうに綺麗な奥さんに手当してもらえて」

「………」


思わず眉間に皺が寄る。

別に好きこのんでしているわけじゃない。

ただ、目の前で血を見るのが嫌なだけで、痛々しくて気分が悪くなるのだ。

だから小さい頃から見てきた母の影響もあってか、見様見真似で傷の手当をしているのだけのことで…


「いや、こんな下っ端の俺にまで気にかけて貰ってマジ光栄っす」

「大袈裟だって」

「そんなことないっす。正直前の姐さんの時はこんなふうに会話をするのもできないっていうか、俺達下っ端の連中には半端なく冷たかったっすから」

「え……」

「あっ、ていうかっ、その。今のは違うくてっ、えっと、なんつーか本当感謝してるっつうことっす!」