愛情の鎖


それからお好み焼きをペロッと食べ上げた西田さんは「ご馳走さまでした」と満足したように帰っていった。

そして帰り際、コウさんに気付かれないように私にコソッと耳打ちした言葉が衝撃だった。


「コウさんのあの様子だとさぞかし夜の方も情熱的そうっすよね?」

「……えっ?」

「いやいいんっす。俺はコウさんのことを人間的にも仕事の上司としても尊敬してるし、多少の職権濫用ぐらい目をつむりますんで。あ、他の仲間にも内緒にしとくんで安心してください」


その言葉に一気に顔が熱くなった。

何か絶対勘違いしてる……。そう思ったけれどそれはすでに遅し。彼はうんうんと一人完結させると「また来ます」」と言ってあっという間に帰ってしまった。



はぁ…、なんだかなぁ。騒がしい人だ。

彼の言動に苦笑いを浮かべると、チラッとコウさんの方を見た。

西田さんは気付いていないけど、コウさんと私の間にはまだ若干の壁がある。

だって私達の間には男女の関係はないのだから。

多少のキスは交わすものの、それ以上のことはしていない。
それはコウさんなりの刑事としてのケジメなのか、私を傷つけないようにしてくれているのか、彼の行動は思った以上に慎重だ。

だけどそれは私にとって安定したものを与えてくれていて、宗一郎さんとの一件があったこともあり、少し男の人に恐怖を感じる私にとって、とてもホッとする時間でもあった。