愛情の鎖


……婚姻届って?


そう疑問に思いつつ、少しの間のあと私は彼の問いかけに肯定するように頷いた。


「一応書きましたけど……」


それがどうしたんだろう…

……確かあれは、借金と引き換えに宗一郎さんのマンションに引っ越して来た時のことだった。

落ち着く間もなく彼にこれを書きなさい、と真顔で強要されたのは今でもよく覚えてる。

それは間違いなくドラマとかで見る婚姻届で、もうすでに宗一郎さんの名前や私の父母の同意書にもちゃんと印鑑を押してあったから驚いたほどだ。


「ちゃんとお前自信で書いたんだな」

「はい、書きましたよ」


すると、コウさんの顔が怪訝そうに顔を歪め、眉を寄せた。
そして何かを考えるように包丁をまな板に置き、右手で顎のラインを擦りだした。


「……で、その婚姻届はそのあとすぐに役所に提出したってことか。つーかそれはどこの役所だ」

「えっ……」


思わず目を見開いた。

その問いに今度は一瞬戸惑い、私はすぐに返事をすることができなかった。