愛情の鎖


本当はそうなれたらどんなに嬉しいか…

そうなりたいに決まってる。

素直に「いいよ」と答えられたらどんなにいいだろう。

……けど、今の私には冗談でもイエスと答えられる勇気はなかった。

だって私はまだ宗一郎さんの所有物。今はただ彼から身を潜め此処に逃げているだけの状況なのだ。


「ほ、ほらぁ手が止まってるよ!からかうのはその辺にしてさっさとお好み焼き作っちゃおう」


だからこうやって誤魔化すことで、この場を上手く切り抜けることしかできなかった。


ああ、私って臆病だよね……。

そうへこみつつ、曇った顔をコウさんに気づかれないよう、ボウルに卵を割ろうとした時だった。


「……なぁ、一つ聞いていいか?」


そう言われ、私は再びコウさんの方へと顔を上げた。


「あいつと…、澤田と籍入れる時ってちゃんと婚姻届を書いたのか?」

「えっ……」


思わぬ問いかけに今度はキョトンと間抜けな声を出してしまう。


「えっと…、それってどういう意味?」


一、二回瞳をパチパチさせるとコウさんが思いのほか真剣な表情だったから驚いた。