呆気にとられた俺はそこに立ち尽くしたまま、視界から消えた梨央の残像を瞳に残す。
まるでおいてけぼりをくらったような気分だった。
また、これ以上踏み込んでこないでと拒絶されたような強い憤りを感じ、
それと同時にやっぱり腑に落ちない感情が俺の中で溶け落ち、目の前で繰り広げられている澤田の軽薄さが無性に苛立ってしょうがなかった。
どうして俺がこんな気持ちにならなきゃいけないのか…、
その時の俺にはまだ分からなかったが、この時、自分の意思に反してもっと梨央の本心に触れたいという戸惑う感情が芽を出していたのが自分でも信じられなかった。
「ーーあ、先輩、梨央ちゃんと話せました?」
「西田、澤田と女将の動きを今夜は徹夜でマークしろ」
とりあえず冷静さを取り戻した俺は、さっきの澤田と女将の話を聞いてそう言った。
やはり今日此処で何かしでかそうとしている様子は二人の会話を聞いて把握できた。それだけでも情報が得られた時点で今は上出来だ。
くそ、ぜってー息の根を止めてやる。クソが。
そんなふてぶてしい態度でいられるのも今のうちだ。



