「まぁ、いいんじゃない?」
「は?」
「あの人のやりたいようにやらせておけば?」
そんな冷たい声に今度は俺が見つめ返す。
ふと見ると、梨央は今まで見たことがない冷ややかな表情をしていて、全てどうでもいいというような素振りだった。
「どうせ初めから好きで結婚したわけでもないし」
「えっ…」
「もう私は部屋に戻るからコウさんも戻った方がいいよ。コウさんはどうして此処に?仕事?それともプライベートで?」
「いや、仕事で……」
「そう。じゃあ仕事に戻りなよ。せっかく声かけてくれたのに変なことに巻き込んじゃってごめんね。また、マンションで……じゃあ」
そう言ってさもどうでもいいかのように俺から背を向けようとする梨央に俺は驚きを隠せなかった。
「おい…」と声をこぼしたものの、それは受け入れてもらえず、梨央はそれから一度も振り返りもせずに自分の部屋に戻って行った。



