愛情の鎖


俺と西田は気付かれないように梨央の死角になる場所に移動した。

あたかも他の客などに違和感を与えないように煙草を吸うふりをしてすぐ目の前にあった喫煙室に身を隠す。

そこは半分ガラス張りになっており、ふらふらとこっちに向かってくる梨央の姿がこちらからだとはっきりと見えた。


「本当今日も可愛いっすねぇ。でも、なんか若干やつれてません?」


西田が煙を吐き出しながらそんな事を言う。

確かに髪は若干乱れ、先程見た時よりは疲れきってるように見える、が。

俺は破棄のない足取りで中庭に入っていく梨央に気付けば視線を定めていた。


「この3、4時間の間に澤田宗一郎にえらく激しく食われちゃったんですかね?」

「………」


俺は何も答えなかった。

例えそうだとしても何の不思議もない。あのがめつい澤田のことだ、自分の手元に置いてる女を毎日どんな風に扱ってるのかは考えなくても安易に想像は出きる。


だけど…

俺は中庭で鯉を眺める梨央の横顔を見つめながら、気付けば自然と煙草を吸い込む強さをぐっと増していた。