その日、再び澤田が部屋から出てきたのは夕方になろうとしている頃だった。
なに食わない顔して出てきた澤田は耳に携帯電話を当てて、誰かと何かを話してるようだった。
俺は気付かれない距離でそれを見張り、西田と共に鋭く一部始終を把握する。
「梨央ちゃんはあれから出てきませんよね」
「ああ」
「そういや、あの女将もさっきいそいそと何処にかに向かってましたよ」
「ふーん」
「なんか面白くなりそうっすね」
西田が顎に手を当て、生き生きとした表情で澤田の後ろ姿を目で追いかける。
不思議とこいつがこんな風に目を輝かせる時は決まって何か起こるときだ。
見た目とは違い、やたら感の鋭いところは案外刑事の仕事に向いてるとは思うが…
「おっ、ビンゴ!あの二人やっぱり接触しましたね」
まるで探偵気取り、家政婦は見た状態のテンションに俺は若干あきれ気味に息を吐く。
そして澤田と若女将が目配せをしながら綺麗に手入れされた中庭へと入っていくと…
「……あれ、梨央ちゃん?」
少し離れた背後から梨央も姿を現した。



