愛情の鎖


「着いたぞ……」


たどり着いた場所はドラマとかに出てきそうな敷居が高そうな老舗旅館だった。

表向きは料亭といったところだろうか?まるで芸能人とかがお忍びで使いそうなそこはいかにもっていう怪しい雰囲気を匂わせていた。


「あの女将をそれとなくマークしろ」

「はい」


あくまで一般の客を装って俺は西田にそんな指示を出す。

その他一緒に来た数名の同じ班の仲間にも指示をだし、俺は澤田宗一郎と梨央の行動に目を光らせた。

肩を抱かれ部屋に入っていく梨央。

それはあからさまに作り笑いを浮かべていて、とても楽しそうだとは思えない。

澤田宗一郎から顔を反らした瞬間、憂鬱そうに視線を落とす表情は印象的で、

いつものように感情を押し殺す姿に俺は、澤田宗一郎よりも梨央の姿ばかりを何故か目で追っていた。


「あの二人、今日は此処に一泊でもするんですかね?」

「さあな」


他の同僚と会話を交わしつつ、俺は鋭い眼差しを一端緩め、部屋へと戻った。

きっと此処で何かあるはず。

そう長年の勘を働かせて…