愛情の鎖


「……まぁ、確かにそうっすね。この百戦錬磨のコウさんがけっこう手こずってましたからね。彼女は今まで関わってきた女達とは一味違うのかも」

「どういう意味だ」

「そのままの意味っす。いつも女に苦労しないコウさんがこんなに手こずるなんて、正直俺も思ってなかったって言うか、意外というか……」

「アホか、これは仕事だ」

「そうっなんすけど、やっぱり彼女はどこか普通の女とは違いますよね」

「………」


梨央の姿を思い出して思わず押し黙った。

確かに彼女は今まで生きてきた中で初めて会うタイプの女だと思う。

おとなしそうに見えて、物事をハッキリというし。
普段警戒心が強い癖に、一端心を許せば何も疑わない素振りで花のような笑顔を見せてくる。

コウさん…、コウさん……、と、


それでも彼女の本音は見えなかった。

隙だらけのようにみえて隙がない。

俺に気持ちを許し始めてるのに、決して本心は見せようとしない。

何気なく距離を縮めようとすれば、するりと交わされ、一定の範囲以内で拒絶されてるような感じだった。