愛情の鎖


それから数日後、予想外に変化が起きた。彼女と澤田宗一郎がこの時初めて怪しい動きを見せたからだ。

俺はいつものように、西田と共に車に乗り込み、澤田達の尾行に目を光らせた。



「ーーで、その後梨央ちゃんとの逢瀬はどうっすか?」

「あ?」


運転中、興味津々に聞いてきた西田に俺はあからさまに不機嫌な声を向けた。


「やっぱり彼女可愛いでしょ?いいなー、コウさんばかりずるいっす。たまには俺にも彼女と接触させてくださいよ」

「アホか」


俺は呆れたように息を吐く。

こいつは相変わらずこの調子で、やたらと梨央、梨央といやらしい口調で話題を出してくる。

こいつの魂胆は見え見えだ。


「お前に任したらそれこそ何しでかすかわからん。職権濫用もいいとこだ。それ以前にお前なんか相手にされねーよ」


彼女のガードの固さは想像以上だ。

見た目のふんわりと穏やかなイメージとは違い、彼女は人間に対してひどい警戒心をもっている。

それはこの歪んだ環境のせいなのか、俺でさえここにくるまでにけっこうな時間がかかってしまったほどだ。