まるで生意気な妹でもできたような感覚だった。
俺には弟はいるけど、妹はいない。もし、俺に離れた妹がいたらこんな感じなんだろうか?
そう思えるほど、気づけば梨央との距離は確実に縮まっていき、俺は彼女の事を色んな角度で見定めることができた。
……ただ、それでも澤田宗一郎の情報だけは今一掴めなかった。
何故なら、彼女の口からその話題が全くと言っていいほどでてこないからだ。
もしかして、俺の正体に薄々気づいてる?それとも澤田宗一郎そのものに対して感心がないのか……、
それに気づき初めたのはここ最近のことで、きっと後者の方だ。
少し試すよう遠回しに「旦那」という単語をだせば、決まって彼女の表情が一瞬強張りを見せた。
それは無意識なのか、彼女の瞳は暗く色を落とし、悲しみの表情を必死に作り笑いで堪えてるかのようだった。
「おやすみ、コウさん」
「ああ、歯磨いて寝ろよ」
そんな中、別れ際チョコレートを渡すのも最近の日課だった。
最初こそ怪訝そうな顔をされたものの、男が甘いもの食って何が悪い……、
的な素振りで強引に手渡せば、彼女は意外そうに驚きつつもそれを面白そうに受けとるようになった。
まるで餌付け…
そう思えるほど、俺の行動は彼女に対してずいぶんと砕け、親密なものになっていた。



