愛情の鎖


しかもああ言えば、こういう。

俺に向かって悪態はつくわ、容赦なく言いたいことを言ってくる。

どこが純粋そうな女だよ……

そんなタイプとは程遠い。

半年前、後輩の西田との会話をふと思い出しては、「ちっ…」と、時々舌打ちさえしたくなってくる。


「明日は雨かな?」

「さぁ、雨かもな」

「コウさんは晴れと雨どっちが好き?」

「は?」


まるでガキの会話かよ。

そう思いながらも、そんな彼女との会話は不思議と嫌じゃなかった。むしろそんなやり取りにさえ律儀に答えてしまう自分に少し笑えたほどだ。



「ずっと晴れてくれればいいのにね」


時に梨央がビールを飲みながら俺に言う。


「雨だと此処でビールが飲めなくなっちゃう」

「なんだ、そんなに俺に会いたいのか?」

「あはは、ないない。逆にコウさんの方が淋しいんじゃないの?」


生意気にもべっと舌を出してくる。

「むしろそっちの方が私にちょっかいかけてくるくせに」とでも言いたげなその表情は俺に対してさも挑発的で、俺も嫌みったらしい表情で対抗するように口の端を上げた。