まるで人生を諦めている。
そんな風に感じ取れるほど彼女の瞳は色がくすみ、なんの感情も読み取れなかった。
「……なぁ…」
「……ん?」
「もっとお前の歌聞かせて?」
それでも、俺がそう言うと彼女は唯一嬉しそうに喜んだ。
少し頬を赤らめて、照れくさそうではあったが、俺の要望に答えてくれた。
静寂の夜空に彼女の歌声が天高く登っていくと、俺は目を閉じ、気づけばその声に夢中になっていた。
やっぱり美声だな…
そう思うと同時に彼女の歌声にいつの間にか、聞き惚れている自分に気付く。
彼女の声が体全体に染み渡っていくようだった。
まるでこの疲れきった体を癒してくれるよう、
美しく、温かく響くそれは俺を優しく包み込んだ。



