私は恐る恐るベッドから降りた。
黒とグレーに統一されたベッドは思いの外ふかふかで、見慣れないその光景にやっぱり嫌な緊張が押し寄せる。
まるで何処か知らない異空間に迷い混んでしまったのかのような…、
一瞬宗一郎さんの顔が浮かび上がったけれど、それを振り払うように私は首を振り、勇気を出して目の前の扉を開けた。
「わっ……」
そこはやっぱり見慣れない空間だった。
今でのマンションとは間取りはまったく違うけれど、それに匹敵するぐらい広々としたリビング。
ただ、驚くことにそこは決して綺麗とは言えなかった。
ソファーにかけられた何枚の使用済みの衣服。
ローテーブルにはよく分からない書類が乱雑に置いてあり、飲みかけのマグカップもあった。
せっかく高級そうな家具なのにもったいない…。
きっとそれぐらい毎日世話しなく生活してるんだろうな、と思わせる生活感溢れるそこは、やっぱり一度も足を踏み入れたことのない真新しい世界。
思わず瞬きを繰返しながら辺りを眺めているとガチャリ、別の扉が開いて、聞きなれた低めの声が飛んできた。



