「梨央、時には誰かに頼る強さも必要だ」
私は右手の甲で震える口元を押さえ、コウさんの言葉に耳を傾ける。
衝撃だった。
誰かに頼る強さ。そんなこと今まで一度も考えたことなんてなかった。
「助けて欲しいならそう言えばいい。ちゃんと俺の目を見てしっかりと言えよ」
「…コウ……」
「頼れる奴がいるなら素直に甘えればいい。ほら、俺をしっかりと見ろ」
コウさんが拳銃を地面に置いて、私の両頬を挟みそっと顔を持ち上げた。
「言っとくが俺は容赦はしねぇ。お前が俺を求めるなら悪いようにはしない。梨央の代わりにあいつの息の根を止めてやるよ」
「………」
「だからもう頑張るな。もっと俺に頼れよ。何も考えずに俺のとこに飛び込んでこい」
うっ……
その言葉を聞いた直後、体が勝手に動いていた。
前のめりに足を踏ん張り、勢いよく手を伸ばし目の前のコウさんの首にすがり付く。
「ふぇっ……」
きっとこれを逃したら最後、私の人生は終る。
そう思えるほどに、彼の抱擁は力強かった。
とても安心する。だからぎゅうぎゅうとしがみついて、私は震える声でコウさんに言った。



