愛情の鎖


「…こんな世界はもうウンザリ。やはく解放されたい……」


コウさんと視線が絡まりあって、ドキリと息を飲む。

ただ、私の言葉を聞いても彼の足は止まらなかった。

私の忠告なんてお構いなしに、私との距離を堂々と縮めてくるコウさん。彼の眼差しが鋭く光り、思わず身震いをした。


「…コウ……」

「撃ちたいなら撃てよ」


ついに私の側まで来たコウさんが何を思ったのか、突然私が持つ拳銃を掴んだ。

そしてその先端を引き寄せ、それを迷いなく自分の胸元に当てる。


「そんなに苦しいならこのまま撃てよ。俺はお前になら撃たれてもいいけどな」

「なっ……」


何言って…

呟こうとした私の声は不覚にも不発に終る。なぜなら…、目の前のコウさんがいつになく優しい表情に変わったから…


「梨央お前の好きにしろ。それでお前の気持ちが楽になるなら本望だ。俺はどうなってもいい。さあ、撃てよ」

「…っ……」


ふわり微笑まれて、ぎゅっと心が詰まる。

一瞬時が止まったような気がした。見つめ合ったまま動けない。

コウさんの瞳があまりにも愛情に満ち溢れてるように見えたから、ドクンと鼓動が震え、おかしいぐらい何も言えなくなってしまう。